Borussia Dortmund Magazine

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トーマス・トゥヘルに吹き荒れる逆風と、彼に関する状況の整理

   

トーマス・トゥヘル監督に逆風が吹き荒れている。最下位のダルムシュタットにみじめな敗戦を喫すると、チャンピオンズリーグ、ベンフィカ戦も敗れた。オーバメヤンのPK失敗という不運もあったが、指揮官に多くの批判が浴びせられている。

トゥヘル監督に対するプレッシャーは日に日に高まっているが、彼には擁護できない点と、擁護すべき点がそれぞれ存在する。感情論で彼の人格や振る舞いを否定するのは簡単だが、それはフェアではない。ここでは彼に関する状況を一度整理することを試みる。議論の材料にでもしていただければ幸いだ。

擁護できない点

守備問題
ウィンターキャンプでは積極的に守備の問題に取り組んだドルトムントだが、結局その問題が解決することは無かった。中途半端な場面でのボールロスト、高いラインを敷いた際のリスクマネージメント、ロングボールに対する処理の甘さ。ポゼッションゲームを遂行するにあたって、今のドルトムントはあまりに前輪駆動すぎる。

バイエルンやライプツィヒには5バック(攻撃時には3バックに変更)で勝利を収めたが、ウィング2選手(ここ最近はマルセル・シュメルツァーとエリック・ドゥルム)両方をかなり高い位置にまで上げているため、不用意なボールロストから危機に陥ることが多い。現在のチームは前線と中盤、最終ラインの距離感をコンパクトにすべきだし、その距離感の悪さが守備に大きな問題をもたらしている。

ユリアン・ヴァイグルの起用
トゥヘル監督はアンカーにユリアン・ヴァイグルを欠かさず起用しているが、彼のマークが今シーズンはかなり厳しくなっており、度々ボールを受けて孤立している様子が見受けられる。テクニックやスキルのあるプレーヤーだが、彼にもう少しサポートをつけるべきだ。ラファエル・ゲレイロがヴァイグルのサポート役でボールを受けるようになったが、あまりにヴァイグルの負担が大きすぎる。この辺のケアを指揮官には求めたい。

4-4-2への対応
ここ最近ドルトムントには4-4-2の布陣で臨むチームが増えている。マインツなどその典型であった。FWの2でヴァイグルにプレッシャーを与え、中盤の4はコンパクトに陣形を維持しつつ、ドルトムントの前後を寸断。意図的にサイドに誘導する守備を行い、ドルトムントからボールを奪うと、カウンターで広大なスペースを攻略するケースが多い。

トゥヘル監督のポゼッションゲームは遊び心を欠いてしまっており、ピッチ上で選手たちは同じ絵を描けていないように見える。ビルドアップの問題が解決されない以上、下位チームから再びポイントを失うことになるだろう。昨シーズンの良いときのドルトムントは、中盤で必ず複数の選択肢が存在し、三角形が無数に存在していた。結局のところ、攻守においてあまりにバランスを欠いているのだ。

発言
自身の発言に無頓着な面があり、度々メディアを騒がせている。マルコ・ロイスとマルセル・シュメルツァーのキャプテン問題もキャンプ終了時までもつれこんだ。キャプテンに対する議論を何故長引かせたのかは理解できない。また、前節のダルムシュタット戦後、次のように敗因を説明している。

「ライプツィヒ戦とヘルタ戦では、非常に力のある2チームが対戦相手だった。そうした強敵に対しては、選手たちの全感覚が研ぎ澄まされ、集中力が高まり、全力を出しきることができる。あまり重要ではないと思われる試合になると、力を出しきる部分において問題を露呈してしまうようだ」-トーマス・トゥヘル監督(BVB公式

トゥヘル監督に非難が集中する理由として、選手を庇う場面も多々あるが、根本的に自身の責任についてほとんど言及しないところである。自己反省の言葉があった上で、チームに対する不満を述べるならばここまで反感を買うことはないだろう(その点ユルゲン・クロップは言葉巧みであった)もちろんトゥヘルの心の中では自己の言動や振る舞いを顧みていると思うが、表に出さなければその胸の内は誰にも理解されず、彼に対する誤解だけが残るだろう。

メンタルマネージメント
燻ぶったチームに火を着ける。闘争心を煽るという面について指揮官の手腕に疑問が残る。ビハインドを喫している際に、チームを奮い立たせる「言葉」を語りかけているか。無論それだけでは勝利を掴むことはできないが、トゥヘル監督はそういったものに関心を抱かないように思える。

この悪い流れの中にチームが立たされている中、指揮官はどのようにメンタルマネージメントを行っているのだろうか。「あまり重要ではないと思われる試合になると、力を出しきる部分において問題を露呈してしまうようだ」と指揮官は述べたが、”あまり重要でない”試合に対してどこに動機づけしていくのか。それは指揮官に課せられた極めて重要な仕事である。

擁護できる点

主力3選手の同時移籍
ドルトムント低迷の最大の要因はここだ。マッツ・フンメルス、イルカイ・ギュンドアン、ヘンリク・ムヒタリアン。昨シーズンの躍進を支えた屋台骨を同時に失い、トゥヘル監督はチーム再編を余儀なくされた。この点は考慮されなければならないし、それが今になって尾を引いている。

無論、3選手の放出は指揮官の以降ではない。首脳陣の売却希望に対して、指揮官が渋々容認したものである。1億ユーロを超える莫大な移籍金を得た一方、クラブは若手有望株を買い漁る方向に向かった。もちろんマリオ・ゲッツェ、アンドレ・シュールレ、セバスティアン・ローデ、マルク・バルトラという「即戦力」を補強したが、フンメルス、ギュンドアン、ムヒタリアンの穴を埋めるには、現段階ではあまりに程遠い。

この3選手を同時に欠いた中、野心的で優勝を狙うチームをすぐに作るというのは、よほど手腕に優れていなければ不可能だろう。ヴァッケ社長は今シーズンも再三にわたって「我々はバイエルンハンターではない」と野心を示さず、「過去10年で最大の激変」と過度な期待を寄せないよう釘を刺した。

「まぎれもなく過去10年間では最大の激変だ。我々は強力でハングリーなチームを新たに作りたい。2011年、2012年のチームのようにね。しかしそれは一夜で生み出せるようなものでもない。ユルゲン・クロップ監督がチャンピオンチームを作るのにも時間が必要だった。トゥヘル監督もそれは同様だ」-ハンス=ヨアヒム・ヴァッケ社長(ルールナハリテン紙インタビュー)

ヤングプレーヤーの獲得
ウスマヌ・デンベレやエムレ・モル、また冬のマーケットで獲得したアレクサンダー・イサクなど、10代の若手選手をドルトムントは立て続けに獲得。だが、その獲得に指揮官が関与するのは最後の段階であると明かしている。

チーム状況に必要な選手が補強されているのかどうかに疑問が残る。一部報道では、トゥヘル監督はこの冬にレヴァークーゼンからセンターバックのエメル・トプラクの獲得を希望したものの、クラブはその要求を拒否したようだ。トプラクは移籍条項が解除される今夏に獲得することが決定。指揮官のリクエストに対して、首脳陣はどこまで応えているのか。魅力的な若手はチームを加速させる上で重要なファクターとなるが、その一方で、不安定さや一貫性のなさも覗かせる。

「プロフェッショナルな関係を築いている」とトゥヘル監督はヴァッケ社長、ツォルクSDとの関係性について言及したが、その補強方針には「ずれ」を感じざるを得ない。

怪我人問題
チームは前半戦で多くの選手が離脱し、練習から試合まで一貫したメンバーで臨むことが出来なかった。このことによって、チームの再編成が容易に進まなかったとも擁護可能だ。冬のトレーニングキャンプでも数人が離脱するなど、メディカルスタッフにも疑問が残るが、全てが全て「チーム・トゥヘル」の責任ではない。(試合中に負った怪我など多岐にわたる)

特に高額の移籍金で「出戻り」したマリオ・ゲッツェは、未だ怪我(筋肉系の問題)に悩まされており、コンスタントに試合に出場できていない。彼がかつてのパフォーマンスを取り戻すには、あとどのくらいの時間が必要だろうか。

ダルムシュタット、ベンフィカと連敗。そして週末には「南スタンド」が閉鎖されたジグナル・イドゥナ・パルクでヴォルフスブルクを迎える。自信を喪失したチームがどのようなアクションを披露するのか、指揮官の手腕とチームの反応は非常に興味深い。ドルトムントにとっても、トゥヘル監督にとってもまさに正念場だ。(終)

 - 16/17シーズン, チャンピオンズリーグ, ブンデスリーガ, ボルシア・ドルトムント ,

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Comment

  1. dmj2000 より:

    いつもドルトムントの情報を教えて頂きありがとうございます。
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